My Music Linernotes Vol.1 OKAMOTO'S(後編)

mora qualitas story公式
mora qualitas story公式

記事内画像

音にこだわりを持つミュージシャンやプロデューサー、スタジオエンジニアがこれまでに長く聴いてきた自らを形成した作品の魅力や音について語る連載コンテンツ「My Music Linernotes」。その第2回は2020年4月15日に初のベスト・アルバム『10’S BEST』を発表するOKAMOTO'Sが登場。前編のオカモトショウとオカモトレイジに続いて、オカモトコウキとハマ・オカモトがお気に入りの作品をそれぞれ2枚挙げてくれた。

(インタビュー/小野島大 写真/古溪一道)

────

■オカモトコウキ

レッド・ツェッペリンはジミー・ペイジのギターだけで聴ける

──コウキさんが選ばれたのはレッド・ツェッペリンの『レッド・ツェッペリン Ⅱ』ですが、いろいろ傑作がある中で、その2ndアルバムを選んだところにこだわりがあるのかと思うんですが。

もともと音がめちゃくちゃいいと思っていたのと、ギタリストなんでやはりギターの音が気になるんですよね。ジミー・ペイジのギターがすごくよくて、ギターの音だけで聴けるというか。エルヴィス・コステロが声だけで聴けるように、同じようにツェッペリンはギターだけで聴ける。

記事内画像

──それは出音の段階でいいのか、レコーディングで色々と手を加えているのかどちらなんでしょうね。

色々なことやっていると思います。小さいフェンダーのアンプでいじったり、ステージでレスポールを使っているので、レコーディングでもレスポールを使っているかと思いきや テレキャスを使っていたりとか。そのテレキャスを50年代の小さいアンプとかですごくブーストさせて、その音の録り方も色々と工夫したりとか。とにかく音への意思が隅々まで伝達されている作品だと思いますね。

──ジョン・ボーナムのドラムに関しては、マイクをすごく離れて立てて、空間を感じさせるような録り方をしたそうですよね。

そうそう、ルームの音を録って。ジミー・ペイジはプロデューサー気質の人だから、全体の音のことも気を使っていると思うし、ツェッペリンはそういう意味でも音響的にもおもしろいなあと思って聴いていましたね。

──ペイジはスタジオ・ミュージシャン出身でセッションも何度となく繰り返していたから、録音に関しては思うところがあったみたいですね

だから、音的にということで選んでみました。60年代末から70年代前半までの録音の良さは、その時代にしか出せないものだと思うんですよね。

──当時、ロックの音が変わったというか、クリームはツェッペリンの3年ぐらい前にデビューしていますが、ずいぶんと音が違うじゃないですか。60年代末にロックのエンジニアリングが革新されたという気がします 。

1stアルバムの『レッド・ツェッペリン』も音がいいですよね。

──2ndはツアーの合間に細切れに録ったから、スタジオもバラバラだし、条件は必ずしも良くないはずですけどね 。ご自身の音作りの参考になるところもありましたか?

ペイジはギターヒーローのように扱われていますが、実はギターにあまりこだわりがないと思うんですよね。曲をよくするためだったら何でもやってしまうというように。小さいアンプで弾くとか常識はずれなことをやってのけたり、固定観念と変なこだわりを持たないところが好きなところですね。

──ご自分もプロデューサー気質のところはありますか?

そこまでいくかはわからないですけれど、色々なことはやってみたいとは思います。曲ごとにセッティングを変えたり、ギターのサウンドも毎回シグネチャーのように同じことをやるんじゃなくて曲に合った、求めるものを選んでやるタイプなのは確かですね。

──自分のスタイルをぐいぐいと押し出すのではなく、曲に合った演奏を考えていく。確かにペイジもそのタイプですね。

だから好きなんでしょうね。

──ツェッペリンのほかのアルバムはどうなんですか?

全部好きです。中でも『プレゼンス』が特に。

レッド・ツエッペリン『Led Zeppelin II (Deluxe Edition; 2014 Remaster)』

Led Zeppelin II (Deluxe Edition)
Led Zeppelin II (Deluxe Edition)
レッド・ツェッペリン

mora qualitasで聴く

────

マイケル・ジャクソンは作品が持つバランスの重心の違いを楽しむ

──もう1枚挙げていただいたのは、マイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』です。

このアルバムも内容はもちろん、音の良さで選びました。

──マイケルのアルバムはおしなべて音がいいですよね。

そうなんですよ。でも、『オフ・ザ・ウォール』に続く『スリラー』と『BAD』、特に『BAD』は当時の最新機材を用いたことで、時代感を抱いてしまうんですよね。『スリラー』はミニムーグ、『BAD』はシンクラヴィアを使っていて。でも、『オフ・ザ・ウォール』は普遍的な感じがするというか。

──いわゆるソウル時代のマイケルから、キング・オブ・ポップとなったマイケルの橋渡し役となった作品であり、ディスコというキーワードもある。

ドラムも最高ですからね。でも、実は『オフ・ザ・ウォール』をちゃんと聴いたのは5、6年前くらいのことなんです。

──マイケルくらいになると当たり前の存在というか、きっかけがないと深く聴き込むこともないですもんね。

そうなんですよ。『スリラー』とか深く聴き込んでいる人とあまり会ったことがない。「ビリー・ジーン」って、めっちゃすごい曲だよねという話を同世代のミュージシャンともしないですし。でも、『デンジャラス』と『インヴィンシブル』の良さならお互いに語れる気がする。特に『デンジャラス』は音質がすばらしいので。「ブラッド・オン・ザ・ダンス・フロア」も好きですね。

──『デンジャラス』は音が良いですよね。テディー・ライリーの手腕が光っている。やはりツェッペリンもマイケルも音の良さを評価して選んだということですね。

そうですね、選定基準は無限にあるといえばありますが、今回はジミー・ペイジのギターの音はマジでいいなとか、マイケルのアルバムって音がいいなというように音質だけでない音の良さという基準で選ばせてもらいました。

──ツェッペリンの場合は必ずしもお金を湯水にように使ってのレコーディングではなかったと思いますが、マイケルの場合はかけた予算がそのまま音に反映されているようですよね。

それは言えますよね。でも、先ほども話しましたが最新機材を自由に使えた環境というのが逆に仇になってしまっているところもある。当時は最先端の音だったでしょうが、やはり今は時代を感じてしまうんですよね。好きなんですけど、テディー・ライリーが手がけた音も時代を特定してしまっている。

──ミュージシャンの立場としては最先端でありたいという思いと、普遍的なものでありたいという思いは相反するものになりますよね。

両方大事なんですけどね。最先端まではいかなくてもいいんですけど時代と同調するというくらいの意識は必要だと思っています。でも、5年、10年で古びてしまうのもそれはそれで良くない。音楽を作っていく上で、いちばんバランスが難しいところかもしれません。マイケルは作品によって、そのバランスの重心がどこにあるか違っていますが、その違いを楽しむという意味でもぜひ聴いてみてほしいですね。

マイケル・ジャクソン『Off the Wall』

Off the Wall
Off the Wall
マイケル・ジャクソン

mora qualitasで聴く

────

■ハマ・オカモト

コピーするけど、いまだに何をやっているのか全然わからない

──まず1枚目はタワー・オブ・パワーの74年作『オークランド・ストリート』、原題は『Urban Renewal』を選ばれましたが、その理由は?

ショウとコウキのように明確な理由があるわけではなく単純に好きということで選びました。タワー・オブ・パワーは一通り聴いていますが、やはりこの作品が圧倒的なんですよね。

記事内画像

──この作品を知ったきっかけは?

月並みなんですがベースを弾いているとフランシス・“ロッコ”・プレスティアって、絶対に耳にする名前なので、そうかじゃあ聴いてみようというのが最初でした。たぶん高校生の頃だった気がします。やはりロッコって、ほかのベーシストとは決定的に違うんですよ。頭の中でどうやってフレーズを区切っているのかがわからなくて、なおかつバラードであろうがずっと16ビートというのが革命的だと思っていて、その塩梅がすごくいいのが『オークランド・ストリート』なんですよね。エキサイティングな曲とバラードがまんべんなく散りばめられている。録音もいいですね。74年という時代なので、まだ電子音が入ってきていないから各パートの立体的な感じとか、すべてにおいて満点のアルバムです。衝撃的であり影響を受けた1枚ですね。

──その時代だとやっぱりスタジオに全員で入って、せーのでやっている感じでしょうね。

完全に一発録りだと思います。後半になると、どんどんテンポが早くなっていたり。ロッコは70歳手前ですけど、今もそういうスタンスで弾けるプレイヤーでもある。ベースというパート柄、色々とコピーしますけど、いまだに何をやっているのか全然わからないから好きですね。

──コピーができない? ハマさんくらいキャリアがあっても?

はい。常に左手をミュートしているんですよね。同じ弦だったらわかるんですけど、フレーズを弾いているのに毎回そんなにミュートできる意味がわからない。教則ビデオも出ていて、ロッコがめちゃくちゃゆっくり弾いてくれるんです、『オークランド・ストリート』の1曲目「限りある世界」を。何回も巻き戻して見ましたが、それでもわからない。ファンクをはじめ、この時代の良い録音はたくさんあるんですけど、タワー・オブ・パワーはかなり特殊な存在ですね。mora qualitasでも聴かせてもらって再認識しましたが、やっぱり音がいい。70年代の録音は録った際の音もですが、ミックスも優れているので音像や実在感は良い環境と音質で聴くとはっきりと出ますよね。

Tower of Power『Urban Renewal』

Urban Renewal
Urban Renewal
Tower of Power

mora qualitasで聴く

────

ユーミンの1、2枚目をティン・パン・アレーがやっているような1枚

──ボニー・レイットが72年に発表した2ndアルバム『ギヴ・イット・アップ』を選ばれたのも同じ理由で?

そうですね。自分の中でも音が良い屈指の作品。彼女の最近の動向は追っていませんし、もっと言えばこの2作目以降の熱心なリスナーでもないんですが、この作品はそこで演奏しているというようなリアリティがある。彼女自身もデビューして間もない時期で、はつらつとした感じがあって、まだ渋みが出ていない。バックのミュージシャンたちもすごい。ポール・バターフィールドやエリック・カズ、エイモス・ギャレット、デイヴ・ホランド、クリス・パーカーたち、名うてのミュージシャンたちに支えられているけれど、歌っている本人のポテンシャルの方が勝って伝わってくる。ユーミンの1、2枚目をティン・パン・アレーがやっているような、この人はこの後完全にやばくなるという雰囲気がひしひしと出ているんですよね。当時のテイラー・スウィフトのような存在と言える。

──なるほど。

あとはやはり音の良さ。とあるオーディオ雑誌の特集で、何千万もするシステムで聴く1枚として『ギヴ・イット・アップ』を挙げていたのが印象的でしたね。だよね! と、うないずいて本を閉じました(笑)。

──ボニー・レイットは当時シンガー・ソングライターとしての見方が強かったと思うんですけど、リンダ・ロンシュタットやジョニ・ミッチェルといった同時代のすばらしい存在と比べて、ボニーの魅力とはどこにあるんでしょうか?

ぼくの中ではブルースの文脈ですかね。エレキ・ギターになってからのブルースが好きで、当時のフォーキーなサウンドよりも土着的な空気をまとって、20代そこそこの年齢だったボニーがしっかりと歌っているのがほかにない魅力、というか好みなんです。その部分を感じて聴いてほしいですね。

ボニー・レイット『Give It Up』

Give It Up
Give It Up
ボニー・レイット

mora qualitasで聴く

────────

記事内画像

OKAMOTO'S『10’S BEST』

アリオラジャパン

4.15 on Sale

Vox/オカモトショウ、Gtr/オカモトコウキ、B/ハマ・オカモト、Drs/オカモトレイジ

全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモトを名乗っている。2010年5月26日にメジャー移籍1stアルバム『10'S』を発表。その約半年後の11月3日に2ndアルバム『オカモトズに夢中』を立て続けにリリースした。2011年2月にはバンド名の由来にもなっている敬愛する岡本太郎氏の誕生日である2月26日に開催された生誕100年イベント「TARO100祭」に出演した。同年9月には3rdアルバム『欲望』をリリースし、翌10月には初のアジアツアー香港・台湾・ベトナム公演を敢行した。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO'S』、デビュー5周年の2014年1月には5thアルバム『Let It V』を発表し、その年の8月にリリースされたコラボレーション5.5thアルバム『VXV』では豪華アーティストとの強力コラボレーションも実現した。2016年9月にはロック・オペラを現代版に昇華させた6thアルバム『OPERA』、2017年8月に7thアルバム『NO MORE MUSIC』、そして2019年1月に8thアルバム『BOY』をリリース。10周年イヤーとなるこの年、ワンマンツアー「OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2019 “BOY”」を全国20箇所・21公演にて敢行。ツアーファイナルでは自身初の武道館公演「OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY LIVE “LAST BOY”」にて大成功を収めた。2020年4月には、自身初となるオリジナルベストアルバム『10'S BEST』をリリース。さらに、5月には3度目となるホールワンマンが東京・中野サンプラザ、兵庫・神戸国際会館こくさいホール、愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホールの3か所にて開催が予定されている。

https://www.okamotos.net/

────────

「STORES」のCMに起用され、4月15日にリリースされる『10'S BEST』にも収録される新曲「Dance To Moonlight」が先行配信中。

Dance To Moonlight
Dance To Moonlight
Dance To Moonlight
OKAMOTO'S

mora qualitasで聴く

過去のストーリー

今週の人気投稿まとめ 2022/01/21
今週の人気投稿まとめ 2022/01/14
今週の人気投稿まとめ 2022/01/07
mora qualitas story公式
mora qualitas story公式

mora qualitas storyの公式アカウントです。お知らせだけでなく、皆さまに楽しんでもらえる様々な企画や特集も発信していきます。高音質ストリーミングサービス“mora qualitas”をお楽しみください。https://mora-qualitas.com/ Twitterはこちら https://twitter.com/moraqualitas_JP

1件
 のコメント
dsk

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です