My Music Linernotes Vol.1 OKAMOTO'S

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音にこだわりを持つミュージシャンやプロデューサー、スタジオエンジニアがこれまでに長く聴いてきた自らを形成した作品の魅力や音について語る連載コンテンツ「My Music Linernotes」。その第1回は2020年4月15日に初のベスト・アルバム『10’S BEST』を発表するOKAMOTO'Sが登場。まずはオカモトショウとオカモトレイジがお気に入りの作品をそれぞれ2枚挙げてくれた。

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■オカモトショウ

ブライアン・ウィルソンが明るい曲を書いている時期ほど、苦しみがあったように思うんですよね

──まず、ショウさんはザ・ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』を選ばれましたが、ちょっと意外でした。てっきりストゥージズを選ばれるのかと思っていましたので。

ストゥージズはレイジが選んでくれたので、ザ・ビーチ・ボーイズを選んでみました。バンドを始めた頃はザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズなどイギリスの60年代のバンドが好きだったんですけど、5年くらいバンドをやっていくうちに彼らがそもそもどんなバンドに影響を受けて音楽を始めたのかも知るようになって、偉大なミュージシャンたちはみんな勉強しているんだなと悟ったわけです。そんなタイミングでフィル・スペクターの音楽に出会い、その流れで『ペット・サウンズ』を聴くようになりました。『ペット・サウンズ』はフィル・スペクターのスタジオ・ミュージシャンたちが参加しているということがきっかけで。ソングライティングの面でザ・フーやラモーンズも影響を受けているのがわかるし、当時、ザ・ビートルズに音楽的に唯一拮抗していたのがザ・ビーチ・ボーイズである、ということが『ペット・サウンズ』や『スマイル』を聴いていてわかったような気にもなっていました。ブライアン・ウィルソンがヴァン・ダイク・パークスと一緒に頑張っていた時期は、とにかく音楽のことしか頭になかったんだなということも音作りから伝わってきたり。

──当時、ブライアンはザ・ビートルズの『ラバー・ソウル』を聴いて『ペット・サウンズ』を作り、その『ペット・サウンズ』を聴いて刺激を受けたザ・ビートルズは『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を作ったと言われていますね。その『サージェント・ペパーズ』に対抗してブライアンが作ろうとしたのが『スマイル』ですが、結局当時は未完に終わった。

その『ペット・サウンズ』がUS盤なのか、UK盤なの論争もありますよね。でも、ビートルズは4人いて、さらにジョージ・マーティンもいましたが、ザ・ビーチ・ボーイズはブライアンひとり。孤独だったでしょうね。精神的なバランスを崩してしまったのもわかる気がする。だからこそかもしれませんが、ポップスにおける狂気を教えてくれたような気がします。ポップスって明るい楽しい気分にさせてくれる音楽だと思うんですけど、その光の度合いが強いほど、その分だけの影ができる。明るい名曲ほどその裏側に悲しみや苦しみがないと書けないものだと思うんです。それはブライアンだけに限ったことではなく、いいポップスを聴いたときにそう思ってしまうんですよね。悲しいマイナー調の曲が何も悲しい曲というわけじゃなくて、底抜けに明るい曲もどこか物悲しさを感じる。

──ザ・ビーチ・ボーイズも「サーフィン・U.S.A.」の頃はただの明るい曲だったのが、段々と影を伴うようになっていきました。

そう、その影の部分にブライアン・ウィルソンの生い立ちが関わってくるんじゃないかなと思ったり。彼が明るい曲を書いている時期ほど、苦しみがあったように思うんですよね。表面的な音だけで捉えられないと思うんです。

──そういうように音楽家や作品の背景を知ることで聴こえ方が変わってくるということありますか?

変わってくることはありますね。ただ、ザ・ビーチ・ボーイズは同時に何か違うな、これ、という気持ちを抱いたんです。『ペット・サウンズ』を初めて聴いた時、曲の構成が変だな、と。フックばかりあるんだけど、なぜかそのフックに引っかからないというか。『ペット・サウンズ』は明らかに偏執狂的に執着して作った曲じゃないと生まれないパワーがある。それを理解したいと思って聴いていました。

──ヴォーカリストとしての影響もありましたか?

ヴォーカリストとしてはまったく影響を受けていませんが、ソングライターとしてはブライアンのような側面はなくてはいけないという思う瞬間もありますね

──でも、それって意識して出せるようなもんじゃないですよね

そうなんです。頭で理解して、そんな風に作るっていうのが一番ダサい。だからこそすごいと思うし、リスペクトしています。

ビーチ・ボーイズ『Pet Sounds (Mono)』

Pet Sounds (Mono)
Pet Sounds (Mono)
ビーチ・ボーイズ

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宇多田さんの音楽が日本で毎回ナンバーワンを取るというのは夢がある

──一方で宇多田ヒカルの『First Love』も挙げていただいていますが、この作品はリアルタイムで聴いていたんですか?

リアルタイムなんですけど、小学校の低学年だったので何がすごいとかわからないまま聴いていましたね。どこの家庭にも1枚あったような気がする。

──870万枚以上売れたから、本当にそういう状況だったかもしれないですよね

本当に。それで大人になって改めて聴いた時にノスタルジーも込みですけど、変わった曲を書くなという印象も抱いたんですよね。

──メインストリーム中のメインストリームの音楽ですが、それでもちょっと変わったという風に感じられたというのは?

自分で音楽を作るようになってから、この音楽がこんなに愛されるのはどうしてだろうとすごく気になったのがきっかけで。楽曲における勝利の方程式というか、その方程式に当てはまっている曲もあるけど、そうでない曲もある。そうした曲はサビがすごくキャッチーに抜けて聴こえる、ヌケ感があるんですよね。タイアップの仕事だったら必ず要求されるようなチェック項目に当てはまっていない曲もめちゃくちゃヒットしている印象があって、その奥にある惹きつけてやまないパワーというものは何だろうと考えたりするんですよね。

──それは何なんでしょうね?

何なんでしょうね。「COLORS」とか、Jポップというよりもアジアのポップを聴いているような感覚があって。日本語の譜割りの切り方なのかもしれませんが。やっぱりまだわからないですね、どんな魔法がかかっているのか。

──何が売れたきっかけなんでしょうね。

街中でかかっていたのも大きいと思いますけど、年月を重ねてもその時々の若い人たちが好きと言い続けるところに魔法があるんだと思うんですが、やっぱりわからないですね……。

──声の魅力も大きいと思いますけどね。宇多田ヒカルの曲を他のアーティストが歌ったらそこまで魅力的なものになるかというと、そうならない気もしますし。

それももちろんあると思います。声の距離感や質感なんでしょうかね。そこも特別だなと思います。

──やはり、自分では努力しても得られないものなのでしょうか?

得られないと思います(笑)。得られたらうれしいですけど、仕組みを読み解いて自分のものにできるような能力じゃなさそうな気がします。

──でも、逆に仕組みが解けて真似できるような音楽だったらおもしろくなくなりますよね。

そりゃそうですね。だからこその魅力なんでしょう。そこに音楽のマジックがある。ロジックじゃない。そんな宇多田さんの音楽が日本で毎回ナンバーワンを取るというのは夢があるなとも思います。

宇多田ヒカル『First Love [2014 Remastered Album]』

First Love [2014 Remastered Album]
First Love [2014 Remastered Album]
宇多田ヒカル

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■オカモトレイジ

レッチリはそれぞれが凄腕なのに、バンドの美学の方向性が一緒というのがすごい

──レイジさんはレッド・ホット・チリ・ペッパーズの『グレイテスト・ヒッツ』を選ばれましたが、これはミュージシャンになる以前によく聴いていたということでしょうか。

そうですね。ミュージシャンになった後で聴いても、あらためてすごさが連続で伝わってくる。中学生の頃は何も考えずに聴いていましたが、後年になって真剣に聴いた時にこんな手数、音数の少なさで曲を成立させているという驚きがありましたね。後はギターなし、歌とベースとドラムのみというパートでの間の持たせ方を知ったり。そういう発見があるのもずっと聴き続けられる理由なのかもしれません。

──実際にミュージシャンになって音源を作り始めて、レッチリの音の隙間を作っていくという手法は難しいことでしたか?

難しい、うん、いちばん難しいんじゃないでしょうか。不安になってしまう。それを自分たちだけで判断して、音として出せるというのがすごいですよね。ぼくも音を抜きたい派なんですけど、音を重ねた音の景色を見ていないと抜くこともできない。

──レッチリはレコーディング段階では音を重ねているけど、そこから段々と抜いていっているということですかね?

そこは考えたことがないからわかりませんが、あれだけドラムがしっかりと叩かれて、ベースも弾かれてしまうとギターが入り込む余地がありませんよね。ギターはこんなものんでいいかとなるんじゃないでしょうか。そこはジョン・フルシアンテの存在が大きいように思います。レッチリ自体で音が抜かれているというよりも、ジョンの差し引きの美学がそう感じさせているというか。チャド・スミスのドラムもメタルっぽさがありますが、普通の8ビートしか叩かないんですよね。手数も少ないし。そこでフリーが弾きまくっているというパターンがけっこうある。

──ベースとドラムだけで成立するという状況において、その上にギターを重ねることで何ができるかと考えたら、こうなってしまったということですよね。

そういう発明なんでしょうね。それぞれが凄腕なのに、それまでやってきたことや美学の方向性が一緒というのがすごい。ロックもファンクも自在にできてしまう引き出しの多さも含めて。でも、「ダニー・カリフォルニア」のように音をたくさん重ねている曲もありますね。

──スカスカの初期と、それ以降のメロディアスな路線とどちらが好きですか?

好みで言ったら、スカスカの方ですね。この境地にたどり着きたいです。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Greatest Hits』

Greatest Hits
Greatest Hits
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

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帯のフォントがかっこよくて、これは絶対にやばい音だなと確信して買った

──あと1枚はストゥージズの『ロー・パワー』。邦題は『淫力魔人』。

この作品もレッチリから知ったんです。「サーチ・アンド・デストロイ」をカヴァーしていたので。聴いたのは中学生時代で、ストゥージズをきっかけに初期パンクにはまっていったんです。帯のフォントがめっちゃかっこよくて、これは絶対にやばい音だなと確信して買ったのを今でもおぼえていますね。

──セールスが飛び抜けて良いわけではなかったのに、不思議と聴かれているアルバムですよね。

知っている人が多いし、うちらの場合だとマイケル・ジャクソンより話題に出ることが多い(笑)。でも、普通の人は聴いてないですよね。

──でも、マイケル・ジャクソンは何千万枚も売りましたが、ストゥージズがその何百分の一、何千分の一の影響力しかないかと言えば、必ずしもそうではない。

やはりパンクのゴッドファーザーという立ち位置の魅力と影響力なんでしょうね。ストゥージズのアルバムというよりも、イギー・ポップのアイコニックな存在だと思います。

──イギーの魅力とは何ですか?

やっぱり肉体美じゃないでしょうか(笑)。でも、全部かな。パフォーマンスも含めて。しかも昨年リリースされた最新アルバム『フリー』がめちゃくちゃいいという。70歳を超えて、こんな作品を出してくるとは。ちょっと不安になりました。というのも、デヴィッド・ボウイの『★』を聴いたときのようなニュアンスを感じたので。イギーには長生きしてほしいですね。

The Stooges『Raw Power』

Raw Power
Raw Power
The Stooges

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OKAMOTO'S『10’S BEST』

アリオラジャパン

4.15 on Sale

Vox/オカモトショウ、Gtr/オカモトコウキ、B/ハマ・オカモト、Drs/オカモトレイジ

全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモトを名乗っている。2010年5月26日にメジャー移籍1stアルバム『10'S』を発表。その約半年後の11月3日に2ndアルバム『オカモトズに夢中』を立て続けにリリースした。2011年2月にはバンド名の由来にもなっている敬愛する岡本太郎氏の誕生日である2月26日に開催された生誕100年イベント「TARO100祭」に出演した。同年9月には3rdアルバム『欲望』をリリースし、翌10月には初のアジアツアー香港・台湾・ベトナム公演を敢行した。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO'S』、デビュー5周年の2014年1月には5thアルバム『Let It V』を発表し、その年の8月にリリースされたコラボレーション5.5thアルバム『VXV』では豪華アーティストとの強力コラボレーションも実現した。2016年9月にはロック・オペラを現代版に昇華させた6thアルバム『OPERA』、2017年8月に7thアルバム『NO MORE MUSIC』、そして2019年1月に8thアルバム『BOY』をリリース。10周年イヤーとなるこの年、ワンマンツアー「OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2019 “BOY”」を全国20箇所・21公演にて敢行。ツアーファイナルでは自身初の武道館公演「OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY LIVE “LAST BOY”」にて大成功を収めた。2020年4月には、自身初となるオリジナルベストアルバム『10'S BEST』をリリース。さらに、5月には3度目となるホールワンマンが東京・中野サンプラザ、兵庫・神戸国際会館こくさいホール、愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホールの3か所にて開催が予定されている。

https://www.okamotos.net/

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「STORES」のCMに起用され、4月15日にリリースされる『10'S BEST』にも収録される新曲「Dance To Moonlight」が先行配信中。

Dance To Moonlight
Dance To Moonlight
Dance To Moonlight
OKAMOTO'S

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OKAMOTO'S オカモトショウとオカモトレイジに続き、オカモトコウキとハマ・オカモトが登場するVol.2は近日公開予定です。お楽しみに。

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dsk

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